天井断熱と屋根断熱、基礎断熱と床断熱
天井断熱と屋根断熱、基礎断熱と床断熱
屋根裏部分と床下部分には代表的な断熱方法がそれぞれ二種類あります。それが今回ご紹介する天井断熱と屋根断熱、基礎断熱と床断熱です。それぞれの断熱方法にはメリット・デメリットがあり、一つの方法のメリットはもう一つの方法のデメリットでもあります。多くの戸建住宅ではコストの関係で天井断熱と床断熱が採用されているのが現状です。それぞれの断熱方法のメリット・デメリットを紹介します。
天井断熱と屋根断熱
天井で断熱をするのが天井断熱、屋根で断熱をするのが屋根断熱です。天井部分で断熱する天井断熱が多くの戸建住宅で採用されていますが、屋根断熱も利用空間を広げることができるメリットがあります。それぞれの方法を見ていきます。
天井断熱とは
天井断熱とは、文字通り天井部分で断熱する方法です。建売住宅をはじめ多くの戸建住宅では天井断熱が一般的になっています。天井断熱はグラスウール、ロックウールで施工することが一般的です。これらの素材は質、量ともに流通し、入手しやすくコストも抑えることができます。このほかにはセルロースファイバーでも施工は可能です。
マット状のグラスウールやロックウールならば天井部分にそのまま据え置く、または木材の隙間に入れ込むことで施工します。セルロースファイバーの場合は天井部分に吹き込むことで施工するのです。
いずれの方法でも小屋裏の換気量をしっかり確保することが重要になってきます。小屋裏の換気が十分でないと、熱の逃げるところがなくなり、小屋裏部分に熱がこもってしまうからです。この熱が2階部分を熱してしまい、2階が暑い状態が発生してしまいます。
天井断熱のメリット
天井断熱のメリットの一つ目は断熱材の厚さに制限がないことです。小屋裏の空間の許す限り、断熱材を敷き詰めることができます。その結果、予算をかけて断熱材を厚くするほど高い断熱性能を発揮することができるのです。たとえ安価なグラスウールであっても厚みを増せば高性能な断熱材に匹敵する性能を発揮してくれます。
天井断熱のメリットの二つ目は経済的なことです。多くの家屋で天井断熱が採用されているため、その材料であるグラスウールやロックウールは種類も数も多く流通しています。入手も容易で予算に合わせて断熱性能も選択可能です。天井断熱はスケールメリットを享受できる建材といえます。
天井断熱のメリットの三つめは冷暖房する空間の容積が小さいことです。小屋裏部分が冷暖房の対象エリア外となるので、小屋裏部分の温度を考慮する必要がありません。温度調整をする空間が少なくなるので、より効率的な冷暖房を行うことができるのです。特に夏場は小屋裏部分の温度が上昇します。これをエアコンで調整するのは多くのエネルギーが必要です。このような心配のない天井断熱は空調にも優しいといえます。
天井断熱のデメリット
天井断熱のデメリットの一つ目は小屋裏空間が利用できないことです。ロフトであったり、吹き抜けであったりと小屋裏部分を活用する方法はいくつかあります。天井断熱にして小屋裏部分を熱環境的に屋外としてしまうと、小屋裏部分を活用することはできなくなるのです。ロフトは荷物置場にもなり、子どもたちの遊び場にも使える空間です。吹き抜けも開放感のある場所になります。もし小屋裏部分を活用するならば天井断熱は採用しにくい工法です。
天井断熱のデメリットの二つ目は丁寧な施工が要求されることです。天井断熱は、グラスウールやロックウール使用する場合は敷き詰める工法なので難易度の高い工法ではありません。ですが、雑な工事をしてしまうと断熱材間に隙間が生じてそこから熱が室内に侵入してしまいます。このため、天井断熱の施工には丁寧さが要求されるのです。
屋根断熱とは
屋根断熱は天井の直上部分ではなく、三角屋根の場合は屋根の勾配部分に断熱材を設置する工法です。小屋裏空間を利用するなら屋根断熱が最適といわれています。屋根断熱の場合は二種類の工法があります。一つは根太あるいは登り梁の屋根構造の中に充填する充填断熱、もう一つは屋根構造の外側に断熱材を張る外張り断熱です。充填断熱なら天井断熱と同様のグラスウールやロックウールが材料になり、外張り断熱なら発泡プラスチック系の断熱材を使用します。
屋根断熱のメリット
屋根断熱のメリットの一つ目は小屋裏やロフト、吹き抜けが利用可能となることです。小屋裏空間が活用できると使える空間がぐっと増えます。屋根裏部屋を作ることも可能です。物置やロフトに活用することもできます。吹き抜けやトップライトを設置して階下を快適な空間にすることもできるのです。
屋根断熱のメリットの二つ目は暑さ対策に有利なことです。断熱をしない場合、夏場の小屋裏部分は猛烈に厚くなります。60度以上にもなり、小屋裏で活動することはもちろん、荷物を置いておくことも難しいほどです。屋根断熱は熱が家の中に入ってくること自体を防ぐことができます。小屋裏が異常に暑くなることはありません。
屋根断熱のデメリット
屋根断熱のデメリットの一つ目は工事費が高くなることです。屋根断熱は充填断熱でも外張り断熱でも施工が難しくなります。天井断熱よりも断熱する面積も広くなるのです。施工には熟練した職人さんが天井断熱よりも広い面積を施工する必要があります。このためどうしても天井断熱と比較すると工事費は割高です。
屋根断熱のデメリットの二つ目は断熱材の厚さに制限ができることです。充填断熱の場合、断熱材の厚さは垂木の厚みとほぼ同じになります。外張り断熱も構造上、厚さには制限が加わるのです。厚さが制限されると、断熱性能をあげようとすると断熱性能の高い割高な材料を使うことが必要になります。
屋根断熱のデメリットの三つめは冷暖房費用が余計にかかることです。小屋裏部分が室内空間になるため、ここも冷暖房が必要となります。断熱をしても夏場は小屋裏部分の温度は上昇するのです。屋根裏部屋として活用しようとするとエアコンは必須になります。
天井断熱と屋根断熱どちらにすべきか
小屋裏部分を利用するなら屋根断熱がおすすめです。屋根裏部屋やロフトとして活用を計画するなら屋根断熱にしましょう。天井断熱では屋根裏部屋の夏の暑さには耐えられません。
もし予算重視、経済性重視なら天井断熱に軍配が上がります。施工の簡単さ、施工面積の少なさでは天井断熱のほうが優れています。多くの住宅で施工されているので施工できる職人さんが多いのも強みです。
ランニングコスト重視なら天井断熱がお得です。天井断熱にした場合は、建物内の暖房及び冷房する空気の量が、屋根断熱よりもスペースが減る分、少なくなります。よって暖房や冷房および換気に必要なエネルギーが少なくて済みます。
建物内の空気量のことを気積と言います。気積が少ないと、エネルギー面では色んなメリットがあります。
床断熱と基礎断熱
床下部分で断熱するのが床断熱、基礎コンクリートの部分で断熱するのが基礎断熱です。戸建住宅では床断熱が主流となっています。基礎断熱はシロアリ対策などにコストがかかりますが、優れた断熱工法です。それぞれの方法を見ていきます。
ポピュラーな床断熱
床断熱は床下に断熱材を設置する工法で多くの戸建住宅で採用されています。工法としては、根太や大引きといった部材にグラスウールやロックウール、あるいは発泡プラスチック系を挟み込むことが主流です。床下部分の断熱のうち、9割近くは床断熱を採用しています。
床断熱のメリット
床断熱のメリットの一つ目は安定した施工性です。多くの戸建住宅で採用されているだけあって、建築現場ではだれもが知っている工法になります。施工実績も圧倒的に多いものです。職人さんも経験が豊富で熟練した人も数多くいます。特に指導や指定をしなくてもきっちり仕事をしてくれるはずです。知名度と施工実績でいえば床断熱は圧倒的なシェアを誇っています。
床断熱のメリットの二つ目は床の温度が変わりにくいことです。すぐ床下に断熱材があるので床下空間の熱が床に伝わりにくくなっています。また、特に冬場、床の温度が床下に逃げていくのを防ぐことも可能です。
床断熱のデメリット
床断熱のデメリットの一つ目は気密性の確保が困難なことです。床は配管や電気の配線などが無数に通っています。台所やバス・トイレは特に複雑な場所です。こうした場所は床断熱の施工のしにくい場所でもあります。
床断熱のデメリットの二つ目は基礎コンクリートの冷気が伝わりやすいということです。冬場は床下にも冷気が入り込みます。基礎のコンクリートが冷やされ、基礎を通じて冷気が室内に侵入する場合があります。床断熱では、しっかり断熱施工をしないと、冷気を十分に防ぐことはできません。断熱に精通した業者であることが、とても大切です。
基礎断熱
文字通り基礎部分で断熱する工法が基礎断熱です。基礎断熱の工法には、基礎の内側で施工する方法と基礎の外側で施工する方法があります。基礎断熱は主に発泡プラスチック系で施工することが主流です。施工数では床断熱には及びませんが、多くのメリットがあります。一方でコスト高やシロアリの被害が懸念される工法です。
基礎断熱のメリット
基礎断熱のメリットの一つ目は気密性の確保が容易なことです。床が完成する前に施工すれば工事も簡単にでき、気密性も確保されます。発泡プラスチック系も隙間なく敷き詰めることが可能です。工事も簡単で気密性も確保できるのが基礎断熱の特徴になります。
基礎断熱のメリットの二つ目は地熱効果で温度が一定になることです。一年を通じて地面の温度は気温ほど変化がありません。地面は、夏は涼しく冬は暖かいのです。温度変化が少ないため、冷暖房をしてもエアコンの負荷が少なくて済みます。
基礎断熱の三つ目は水道管の凍結が減少することです。冬場は寒冷地でなくても水道管が凍結することがあります。凍結は水道管にダメージを与え、配管の寿命を短くしてしまうものです。基礎部分で断熱していれば、水道管の凍結を避けることができます。
基礎断熱のデメリット
基礎断熱のデメリットの一つ目は結露とカビが発生する可能性があることです。基礎のコンクリートが乾燥するまで2年から3年がかかります。このコンクリートに含まれていた水分が湿気としてたまっていくのです。この結果、結露が発生しカビの温床になることがあります。
基礎断熱のデメリットの二つ目は外張り断熱の場合、シロアリの侵入の可能性があることです。断熱材の内側は温度差も少なく、シロアリにとっては環境のよい場所になります。基礎部分と断熱材の間をぬってシロアリが侵入してくるのです。シロアリが侵入しても断熱材の内側だとなかなか見つけることができません。
基礎断熱のデメリットの三つ目はコストが高いことです。床断熱に使う断熱材と基礎断熱用の断熱材では価格はほとんど変わりません。ですが、シロアリ対策として基礎の一体打ちを行う事で基礎工事も二割ほどコストが上昇します。また、基礎断熱をすると床下空間も冷暖房の対象となるのです。冷暖房をすべき空間が増えるため、冷暖房の費用が増えてしまいます。
床断熱と基礎断熱どちらにすべきか
それぞれメリットとデメリットのある床断熱と基礎断熱。どちらを採用すべきでしょうか。
経済性を重視するなら床断熱を採用すべきです。建築工事費もランニングコストも床断熱が優れています。多くの職人が床断熱工事を経験しているので工事現場でのトラブルも少なくなるはずです。
一方、気密性を確保するなら基礎断熱です。コストに応じた気密性は確保されます。コンクリートの熱伝導率はあなどれません。夏は暑くなり、冬は冷気を伝えます。こうした基礎コンクリートの熱が伝わらないのは基礎断熱の大きなメリットの一つです。
一部基礎断熱のハイブリッド断熱もできます。配管が複雑になるバス・トイレやキッチン部分を基礎断熱とし、残りは経済的な床断熱とするのです。両方のいいとこ取りのいわばハイブリッド断熱になります。コストの上昇も最小限に抑えられ、シロアリの侵入経路も少なくなるのです。
まとめ
天井断熱と屋根断熱。床断熱と基礎断熱。いずれもメリットとデメリットが表裏一体の断熱方法となっています。実際の現場では、コストを重視した天井断熱と床断熱が主流となっていますが、屋根断熱や基礎断熱も利用できる部分が増えるなどのメリットがあるものです。自宅をどのように使うのかによって選択する断熱方法は変わってきます。重視すべきはコストなのか快適性なのかによっても採るべき断熱方法は変わるのです。自分の家のあり方、使い方をよく検討したうえで適切な断熱方法を選択しましょう。
基礎断熱についてのブログです。
基礎断熱について説明します。
基礎断熱について説明しています。
床断熱について説明しています。
これで分かったような気になるのは、まだ早い!
断熱について大切なことがまだまだあるのじゃ!
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