快適な住宅設計時に必要な知識
設計時に必要な知識
断熱
断熱性能は低いが、エネルギー消費量が少なく快適な家というのは、まず考えられません。
温熱環境・省エネ設計において、断熱性をしっかり検討する必要があります。
断熱性を向上させるメリット
断熱性能を向上させるメリットについて説明します。
①暖房にかかるエネルギー消費量を少なくする
熱損失を減少させること(Q値を小さくすること)は、暖房熱量を減らすことにつながります。
暖房範囲や時間が同じで設定温度も同じであれば、Q値が小さい方が暖房にかかるエネルギーを少なくすることができます。
②自然室温を上昇させる
自然室温とは、暖房をしてない室温です。
自然室温が高いほど、快適性や健康性が向上します。
断熱性能が高いほど(Q値が小さいほど)自然室温が高く保たれます。
①暖房にかかる消費エネルギーを少なくするにもつながるのですが、自然室温が高くなればなるほど、室内の暖房設定温度との差が小さくなり、部屋を暖めるエネルギーが小さくなるということです。
新住協の家づくり 燃費半分で暮らす家 より
③住宅内の温度差を小さくする。
断熱性能を向上させることにより、住宅内の各部屋の間の温度差が小さくなります。
プランや間仕切り壁等の工夫も必要ですが、断熱性能の低い住宅に比べ、格段に改善されます。
部屋の温度差が小さくなるということは、ヒートショックを防止する効果もあります。
北海道で、ヒートショックによる事故が私たちの地域よりも少ないのは、高断熱化の効果によるものです。
④上下温度差を小さくする。
断熱性能を上げる事で上下温度差を小さくできます。
上下温度差が大きいと、頭は暑いが足は冷たいというとても不快な環境になります。
上下温度差を小さくする事で、快適性が向上します。
⑸体感温度が向上する。
断熱性能が低いと室内の表面温度が低くなり、同じ室温でも寒く感じます。
断熱性能が高いと室内の表面温度が低下せず、体感温度を向上させます。
その他にも、
表面結露を防止:表面温度が高くなる事で、表面結露しにくくなります。
足元の温度低下を防ぐ:床下断熱をしっかりする事で、足元の冷えを改善します。
天井からの熱の侵入を防ぐ:天井や屋根面にしっかりと断熱する事で、屋根面からの熱の侵入を防ぎます。
建物の高断熱化はメリットがたくさんあります。
実際に住まれている方にも大変に喜んで頂いております。
リフォーム現場の天井断熱
断熱性能の向上と健康との関係
2010年に住宅の断熱性と健康性に関する大規模な調査が行われました。
『断熱性の向上させると、そこに住む人の病気が改善される』
という結果がでました。
すでに海外では同様の結果が得られており、それを国内での調査結果で追認する形となりました。
断熱性の向上は、住宅内の温度差を小さくし、その結果ヒートショックのリスクが小さくなるということは想定されていましたが、今回の結果は断熱性の向上がもっと幅広い健康性の向上につながることを示唆しています。
快適性の向上や省エネルギーといったメリットだけでなく、健康性の向上に寄与するものとして、断熱性能の考えるべきだという事になると思います。
近畿大学 岩前教授のセミナーにて
断熱性を向上させるデメリット
断熱性を向上させることによるデメリットについて説明します。
デメリット① 夏期の熱ごもり
断熱性=保温性なので、熱が入ると抜けにくいということになります。
しかし、日射遮蔽をして熱がはいらないようにすることにより、解消できます。
日射遮蔽の方法としては、『窓の上に庇を設置する』、『スダレ・ヨシズ等を窓の前に設置する』という方法があります。
※日射遮蔽の基本ですが、建物の外部側で日光を遮る事が大切です。光エネルギーは、物に当たったところで熱エネルギーに変わります。
燃費半分で暮らす家 新住協の家づくりより
日射遮蔽の工夫
デメリット②内部結露
断熱性能が高まることにより、内部と外部の温度差が広がり、壁内での内部結露のリスクが高まります。
内部結露のリスク回避については、『壁の構造をちゃんとする』『室内の湿気の発生を抑える』『換気をする』ことで、リスクを回避するとこが出来ます。
いずれの方法も基本的な考え方は『湿気を出さないことと、排出させる』ことです。
燃費半分で暮らす家 新住協の家づくりより
通風の工夫
断熱の方法について
断熱の方法としては、充填断熱と外張り断熱があります。
一概にどちらか良いとは言えませんが、多いのは、壁の中に断熱材を充填させる充填断熱が圧倒的に多いと思います。
弊社も充填断熱です。
同じ105ミリの断熱をしたとしても、外側へ105ミリ付加するのは、なかなか難しく、費用も充填よりも余分にかかってくると思います。
外張りをするのであれば、充填断熱をした上で付加断熱として外張りをするという考え方の方が良いかと思います。
それぞれ使用する断熱材などで工法は変わってくるかと思いますが、普通に充填断熱で105ミリの断熱材を使い、気密をきちんととり、気流止めをすれば、ちゃんとした断熱仕様の家を建てることができます。
断熱の設計
断熱設計をする際には、Q値計算をしながら設計します。
ただ単純に厚さ何ミリの断熱材を使えば、Q値2.7W/㎡K程度になるはずなので省エネ等級4だから高断熱ということではありません。
屋根・壁・床にどんな材質の断熱材で、厚みはいくつで、窓は何で等々詳細まで決めて初めて数値が出ます。
私達が使用しているプログラムは、Qpexという新住協で使われているプログラムです。
私が色んな方から聞いている話では、一番信用のある計算ソフトではないかと思います。
他にもたくさんソフトはあるのですぎ、申請には使えないとか、微妙な感じのものが多い様です。
それなりに省エネのお家にしたければ、Q値を計算してQ値=2.0前後ぐらいにはもっていくべきかと思います。より高性能なお家が希望の方は、Qpexで計算してQ1.0住宅を目指すのがよろしいかと思います。
Qpex
断熱材の検討
断熱材には様々な種類があり、工務店によって使用する断熱材も違います。
充填断熱か、外張り断熱かの工法の違い同様に、それぞれの長所が違います。
まずは形状が、繊維系かボード系か。
また繊維系でも原材料が何でできているか。
ガラス繊維・羊毛・ロックウール(岩綿)等々があります。
ボード系では、ウレタンフォーム・ポリスチレンフォーム・フェノールフォーム等があります。
吹付け断熱というものもありますが、吹付けの硬質ウレタンフォーム・軟質ウレタンフォームがあります。
吹込み断熱というものもあり、セルロースファイバーなどがそうです。
どの断熱材も一長一短で、特徴もコストもそれぞれです。
一概にあれがダメ、これがダメというのではなく、その特徴と予算等を考慮しながら決めることが良いかと思います。
ですが、どの断熱材を使うにしても、断熱施工の基本的な考え方は同じです。
気密・気流止め・防湿はきっちり施工してもらいましょう。
セルロースファイバーのように調湿させる前提で施行されるものもありますが、基本的には、壁内へ湿気を入れることはダメです。
ウレタンフォームの断熱材
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