ル・コルビュジエについて調べてみた。
「ル・コルビュジエ」この言葉を聞いて、何のことかパッとイメージできる人は多くないでしょう。フランス人建築家として知られる人物のペンネームで、石やレンガが建築資材として主流だった時代に、鉄筋コンクリートを用いたモダニズム建築を提唱した人物として知られています。
近代建築の巨匠と呼ばれるル・コルビュジエはどのような人物なのでしょうか?また、代表作としてはどのような建築物があるのでしょうか?
この記事ではル・コルビュジエについて以下の内容を紹介します。
- ル・コルビュジエとは?
- ル・コルビュジエの代表的な作品
- ル・コルビュジエと日本の関係
- ル・コルビュジエの作品
- ル・コルビュジエのインテリア
ル・コルビュジエがどのような人物で、どのような作品を残してきたか見ていきましょう。
ル・コルビュジエとは
ル・コルビュジエはフランス人の建築家として知られていますが、本名は「シャルル=エドゥアール・ジャヌレ=グリ」という生粋のスイス人です。ル・コルビュジエは40代で雑誌編集者として活躍していた際に使っていたペンネームで、フランス国籍を取得したのも40代になってからでした。
もともとは、時計の文字盤職人だった父の家業を継ぐために時計職人を養成する学校に通っていました。しかし、当時の時計産業は斜陽化しつつあり、さらにル・コルビュジエは視力が弱かったため、別の道を志すことになります。
美術学校で絵画を学んでいましたが、在学中に校長に才能を見いだされ、建築家への道を歩み始めます。建築に関する専門的な勉強はしていませんでしたが、鉄筋コンクリート建築の先駆者や、ドイツ工作連盟の中心人物の事務所に所属しながら実地で建築を学びました。
その後、石やレンガによって作られる西欧の伝統的な建築様式とはかけ離れた、スラブ、柱、階段のみが建築の主要要素とする「ドミノシステム」を考案し、機能性を重視したモダニズム建築を提唱します。
さらに「新しい建築の5原則」として、ピロティ、自由な平面、自由な立面、独立骨組みによる水平連続窓、屋上庭園を提唱し、実際にその理念を体現した建物を建てています。
ル・コルビュジエがドミノシステムや新しい建築の5原則を生み出したことで、柱の配置を適切に行うことで、それまで必要不可欠であった壁に対する設計自由度が高まり、さまざまな建築物が生み出されました。
ル・コルビュジエの代表作
ル・コルビュジエの代表作はさまざまなものがありますが、以下の4つの建築物を紹介します。
- サヴォア邸
- ユニテ・ダビタシオン
- 国立西洋美術館
- ロンシャン礼拝堂
それぞれどのような建築物なのか、順番に見ていきましょう。
サヴォア邸
ル・コルビュジエを象徴する建築物が、フランスのパリ郊外に建築されたサヴォア邸です。新しい建築の5原則すべてが反映されている建物としても有名になりました。壁に構造上の負荷がかかっていないことを、並んだ窓ガラスが象徴しています。
20世紀最高の住宅と言われており、フランスの歴史的建造物にも指定されています。この建物が昭和6年に建てられた点は、驚きではないでしょうか?建築物に興味がそれほどない方でも、観光として訪れてみたい場所です。
ユニテ・ダビタシオン
ユニテ・ダビタシオンは特定の建築物ではなく、ル・コルビュジエが設計した集合住宅の総称です。特に有名なのは、スペインのマルセイユに建築されたユニテ・ダビタシオンではないでしょうか?
ピロティで、地面から持ち上げられた構造になっていますが、8階建て337戸の大型建築物です。ピロティは単にデザインだけではなく、これがあることで解放された空間ができ、そこを人が行きかったり、風が通り抜けたりすることも目的とされています。
国立西洋美術館
日本人が比較的気軽にル・コルビュジエの建築物に触れられるのは、東京の上野にある国立西洋美術館です。新しい建築の5原則のうち、水平横長の窓以外がすべて採用されています。
展示品を美しく見せるために自然光が差し込むような天窓や、視線を変えながら美術品干渉が可能なスロープなど、芸術家でもあったル・コルビュジエの特徴が全面に生かされています。ル・コルビュジエに興味を持った日本人であれば、一度は訪れてみたい場所です。
ロンシャン礼拝堂
スイスとの国境に近いフランスのコンテ地方にあり、ル・コルビュジエ晩年の傑作の一つとして知られている建築物です。交通の便が悪いため、旅行で見学に向かうのは簡単ではありません。
独特の世界観を持っている建築物であり、貝殻構造の屋根や、カニの甲羅を形どったと言われる独特の外観で、他のル・コルビュジエの建築物とは異なる建築様式が特徴です。交通アクセスが悪いですが、それでも多くの人が見学に訪れる人気のスポットです。
小さな家
ル・コルビュジエの建築物の中には、小さな家(湖の家)と呼ばれる建築物があります。これは、ル・コルビュジエが年老いた両親のために建てた家で、スイスとフランスにまたがるレマン湖のほとりに建築されました。ユネスコの世界遺産に登録されています。
ル・コルビュジエの母親は、100歳で亡くなるま30年以上この小さな家に住み続けたことも知られています。
可動式の壁や家具でゆるやかに仕切られた室内は、小さいながらも機能的で、夫婦二人だけで暮らしたいという両親の願いをかなえる住宅です。
1階にはキッチンなどの水回りやリビングが、また小さな2階には夫婦の寝室が用意されていました。外観は小さな家に見えますが、スペースを有効活用することで快適な住空間を実現しています。
また、湖に向かった水平連続窓や屋上庭園などル・コルビュジエの建築エッセンスが詰め込まれています。
海外旅行にもなかなか行けない状況ですが、観光地化されており、3月~8月頃の週末には一般開放もされているため、実際に見学することも可能です。開館日時は季節や曜日で異なるため、実際に観光する場合には事前に確認しておくのが良いでしょう。
スイスのジュネーブ空港や、ローザンヌからの列車利用がおすすめです。
ル・コルビュジエと日本
モダン建築の巨匠として有名なル・コルビュジエと日本とには、どのような関係があるのでしょうか?日本におけるル・コルビュジエの建築は、既に紹介した国立西洋美術館のみです。ル・コルビュジエ自身としても、日本と密接な関係があったわけではありません。
しかし、ル・コルビュジエの存在や国立西洋美術館の建築は日本のモダニズムに対して大きな影響を与えています。
国立西洋美術館の設計には、パリでル・コルビュジエのもとで学んでいた坂倉準三、吉阪隆正、前川國男の日本人3人が手伝っていました。この3人がそれぞれ建築界をリードする役割を担い、それぞれのもとで学んだ弟子たちが他の建築様式に対するモダニズムの優位性を築き上げていきました。
ル・コルビュジエの椅子
ル・コルビュジエが活躍したのは建築の世界だけではありません。椅子を中心とした家具のデザインにおいても評価され、1920年代にデザインされた金属製の家具は全世界で成功を収め、2020年代になった今でも傑作として人気を集めています。
家具デザインはル・コルビュジエが単独で実施したものではなく、建築のパートナーでもあった従兄弟のピエール・ジャンヌレと、シャルロット・ペリアンとの共同作業で生み出しています。
ル・コルビュジエの家具の中でも特に有名なのが「LCシリーズ」と呼ばれる家具です。ステンレスと本革を組み合わせ、建築物のように計算しつくされた美しさがあります。「世界最高デザインの休憩椅子」と言われることもあり、そう呼ばれる理由は次の通りです。
- イタリア製本革を使うことで、きめ細かくしなやかでつややかな美しさを表現している
- ステンレスへのこだわりを持ち、溶接のないなめらかな曲線の美しさを実現している
- 円弧型のフレームが自由に動き、使う人に合わせた最適なフォルムを実現し、3cm幅のベルトが支えるため細かく体重を分散させる
そのフォルムと実際に使用した際の感覚から、「ゆりかご」と呼ばれることもあります。
1点あたり数万円から高いものでは10万円を超える椅子ですが、手がけた建築物が世界遺産に登録されるような世界的な建築家がデザインした椅子です。それを自宅で味わうことができるのであれば、それほど高く感じないのではないでしょうか。
ル・コルビュジエの都市計画
ル・コルビュジエは建築物だけではなく多くの都市計画を立案して来ました。しかし、実際に実現に至ったものはインド北部に建築されたもののみで、ほとんどが計画の段階に留まっています。
ル・コルビュジエまとめ
ル・コルビュジエは、建築業界・家具業界の人でなければそれほど知名度が高くありません。しかし、世界的な建築家の一人であり、現在のモダン的なデザインを生み出したといっても過言ではありません。
複数の建築物が世界遺産として登録されており、その中には国立西洋美術館も含まれています。その国立西洋美術館の建築を通して、日本のモダニズムに対しても大きな影響を与えました。
また、建築物だけではなく仲間と協力して設計から100年が経過しようとしている現在でも人気を集める家具のデザインを実現しています。世界的な建築家が設計したものを自宅で味わうことができるのは貴重な機会ではないでしょうか。
建築物に興味があり、欧州に旅行することがあればル・コルビュジエの建築物を巡る計画を立てるのも面白いのではないでしょうか。