ミース・ファン・デル・ローエについて調べてみた。
ミース・ファン・デル・ローエという人物をご存知でしょうか?20世紀のモダニズムを代表するドイツ出身の建築家ですが、知らない人がほとんどでしょう。名前は知らなくても、ミース・ファン・デル・ローエが残した標語や、建築物をご存知の人は多いかもしれません。
この記事では、近代建築を代表する建築家の一人であるミース・ファン・デル・ローエについて以下のような内容を紹介します。
- ミース・ファン・デル・ローエとは
- ミース・ファン・デル・ローエの残した名言
- ミース・ファン・デル・ローエの建築物、代表作
- ミース・ファン・デル・ローエの設計した椅子
建築家としては、馴染みがないと感じる人もこの記事を読んでもらえれば、ミース・ファン・デル・ローエを身近に感じられるのではないでしょうか?
Contents
ミース・ファン・デル・ローエとは
フルネームはルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエです。20世紀のモダニズムを代表するドイツ出身の建築家であり、ル・コルビュジエやフランク・ロイド・ライトと共に近代建築の三大巨匠と呼ばれます。
墓石や暖炉を扱う石工の両親の元に産まれ、大学で正式な建築の教育を受けることはありませんでした。職業訓練学校で学んだ後は、漆喰装飾のデザイナーを経て建築事務所に勤務し、初めて手がけた作品がリール邸です。
その後さまざまな住宅作品を手がけ、1929年にはバルセロナ万国博覧会でドイツ館であるパヴィリオンを手がけたことは有名です。その後、ドイツ中部のワイマール共和国に設立された美術学校であるバウハウスの三代校長となりますが、ナチスの迫害によりアメリカへ亡命することになります。
その後はアメリカの大学で教授を勤め、アメリカの市民権を獲得し、さまざまな建築物を残しました。
名言
現代においてミース・ファン・デル・ローエをもっとも身近に感じられるのは、彼が残した名言ではないでしょうか?
「神は細部に宿る(God is in the detail)」
建築物は外観に目が行ってしまいがちですが、モダニズムを提唱する建築家が求めたのは、外観をシンプルにしつつも、人が住みやすいような構造に隅々までこだわるという思想でした。細部まできめ細かく作り上げていくことで、全体の完成度が大きく向上するという考え方です。
その思想を的確に表した表現は、今でも名言として使われることが多い標語となっています。
「より少ないことは、より豊かなこと(Less is more)」
ミース・ファン・デル・ローエは「ユニヴァーサル・スペース」という概念を建築に取り入れましたが、何もなく自由な空間を多く確保することで、住む人の選択肢を広げ豊かな生活に繋がることを表現しています。
自分自身で使ったことはなかったとしても、これらの言葉をどこかで耳にしたり目にしたりしたことはあるのではないでしょうか?
建築
ミース・ファン・デル・ローエの建築の特徴は、「ユニヴァーサル・スペース」という考え方です。これは、床と天井を最小限の柱と壁でつないでひろびろとした空間を確保し、床の平面を最大限に広く使う考え方です。
一般的な住宅は、ダイニング・子供部屋・寝室といったように、用途ごとに空間を区切ることが多いですが、ユニヴァーサル・スペースでは、部屋を区切ることでライフスタイルが制限されてしまうと考えます。
そのため、ミース・ファン・デル・ローエが建築した多くの住宅は、部屋の仕切りが一般的な住宅よりも少なく、広いワンルームのような間取りが多くあります。
ミース・ファン・デル・ローエの代表作
数多くの建築物を生み出して来ましたが、その中でも代表的なものを4点紹介します。
ファンズワース邸
そのエピソードも含め有名なのが、女医のエディス・ファンズワースのために設計・建築されたファンズワース邸です。もともと、休日に利用する別荘として建てて欲しいという依頼によって設計されました。
ユニヴァーサル・スペースの考え方を採用し、自然との調和をはかりながら、住みやすさを重視した結果建築費用が高額になってしまいます。現在の日本円に換算すると、10億円にもなります。
ファンズワースに訴訟を起こされ、結果的にはミース・ファン・デル・ローエが勝訴しますが、売却されました。その後は、立地の影響で度重なる水害にも悩まされ、最終的にはナショナルトラストが購入して観光地化されています。
トゥーゲントハット邸
1920年代のチェコスロバキアに建てられた邸宅で、実業家のトゥーゲントハットからの依頼により建築された邸宅です。3階建てで十字型の柱が特徴的な住宅には、当時の一般的な住宅の30倍もの費用がかかっています。
1992年にはチェコとスロバキアが独立する際の調印式が行われた歴史的な場所で、後にユネスコ世界遺産にも登録されています。しかし、ユダヤ人であったトゥーゲントハットはナチスの迫害を受けて移住し、たった8年しか生活しませんでした。
2013年より一般公開されているため、見学することも可能です。
バルセロナ・パヴィリオン
1929年に開催されたバルセロナ万国博覧会で、パヴィリオンの制作をしました。ユニヴァーサル・スペースの考え方を取り入れ、鉄・ガラス・大理石を用いた建設で、モダニズム建築を表した建築物として注目されました。
当時の建物は万国博覧会用の仮設であり取り壊されてしまいましたが、現在は当時の構造を復元した二代目があり、ミース・ファン・デル・ローエ記念館として保存されています。
シーグラム・ビルディング
アメリカに移住した後に、ニューヨークでシーグラムという企業のアメリカ本社ビルとして建設されたのがシーグラム・ビルディングです。シーグラムはカナダの酒造メーカーですが、現在は会社自体は売却され、ペルノ・リカールのブランドの一つとなっています。
現代のニューヨークの都市空間を決定づけたとも言われるシーグラム・ビルディングは、敷地の半分をオープンスペースとあして開放し、フレームとガラスで構成されたガラスの塔のような外観をしています。
これによって、建築の規制が隣地との境界線上に一定の高さを取り、そこから一定勾配で引いた斜線によって高さの制限を決める斜線規制から、広場を設けることで、上部の高さを追加できる容積規制に変更されました。
現在は公開空地として、フォーシーズンズレストランなどの店舗も入居しています。
ミース・ファン・デル・ローエの椅子
ミース・ファン・デル・ローエは、それぞれの建物に合わせた椅子も制作しています。代表的で現在も人気があるものとしては、次の3点です。
- バルセロナチェア
- トゥーゲントハットチェア
- ブルーノチェア
もっとも有名なのがバルセロナチェアです。バルセロナパヴィリオンに置かれ、スペイン国王であるアルフォンソ13世夫妻に座ってもらうためにデザインされました。正規品はアメリカのKnoll社が製造販売しています。過去には日本製の正規品もありましたが、現在はアメリカとイタリアで作られています。
また、優れたデザインであるバルセロナチェアにはリプロダクト品が存在します。意匠権が切れた製品を他のメーカーが似せて製造したもので、レプリカなどとも言われています。
正規品と同じようにバルセロナチェアと呼ばれますが、品質管理などもそれぞれのメーカーによって行われていますので、注意が必要です。モダンデコやタイムレスクラフトなどが有名です。またニトリや大塚家具からも販売されていました。手軽に手に入れたいのであれば、リプロダクト品を購入しましょう。
トゥーゲントハットチェアはバルセロナチェアの背と座面をそのまま活かしつつも、脚が片持ち構造になっています。トゥーゲントハット邸のために、ブルーノチェアと共に制作されました。バルセロナチェアと同様、アメリカのKnoll社がライセンスを取得して販売していましたが、現在は販売されていません。
ブルーノチェアはトゥーゲントハット邸が建てられた地名から名づけられた椅子で、カンティレバー構造に基づいて設計されています。オフィススペースやダイニングルームで利用するとエレガントな雰囲気を醸し出してくれます。
カンティレバー構造とは、椅子の片側だけで座面を支える片持ち構造のことです。
このようにミース・ファン・デル・ローエはさまざまな椅子を生み出しており、世界中で現在も愛され続けています。正規品を購入するには、数十万円~100万円以上が必要となります。
簡単には手に入れられませんが、リプロダクト品でその設計の素晴らしさを比較的リーズナブルに体感することも可能です。部屋の雰囲気をエレガントにしてくれ、なおかつ座り心地の良い椅子を選んでみても良いのではないでしょうか。
ミース・ファン・デル・ローエまとめ
「神は細部に宿る」などで有名なミース・ファン・デル・ローエについて紹介してきました。近代建築の三大巨匠の一人であり、歴史的に価値のある建築物を多く生み出すことで、モダニズム建築に大きな影響を与えました。
日本ではそれほど身近な存在ではない建築物ですが、旅行をした際に訪れる先として検討する価値は十分にあるでしょう。
また、ミース・ファン・デル・ローエを身近に感じられる選択肢の一つとして、建築物のために設計した椅子があります。正規ライセンス品を購入することは簡単ではありませんが、リプロダクト品であれば日本でも入手可能です。
偉大な建築家がデザインした、世界中で愛され続けている椅子を利用することで、ミース・ファン・デル・ローエのデザインの素晴らしさを体感できるかもしれません。
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